Welcome to the section for 地図で読むアメリカ (The True Map of America), published by 朝日新聞出版 (Asahi Shimbun Publications). The co-authors of this book will frequently post updates regarding the region, new sources for reference, and answers to questions here. The newest post will be immediately below this heading.

朝日新聞出版の「地図で読むアメリカ」の情報へようこそ。共著者はここにて、新しい情報、参考資料、そして読者からの質問にお答えします。一番最新のものはすぐこの下にありますので、ご覧になっていただければ幸いです。

*読者の方々へ:本の内容についてご質問がございましたら、本サイトの “About” ページの “Contact” よりお寄せください。なお、全てのご質問には回答できない場合がございます。ご了承のほどお願い申し上げます。


[8] さらば、コロンブス!

アメリカでは、どの著名人物が公共の目立つ場所に銅像を建てるに値するのかをめぐって、判断が難しくなっています。数年前には、バージニア州リッチモンドで大きな騒動が起きました。そこではモニュメント・アベニューに、ロバート・E・リー将軍など、アメリカ連合国(南部連合)の著名な将軍たちの像が並んでいたのです。南部は1865年に南北戦争に敗れましたが、市の指導者たちは、南部の英雄を称えるという名目で、馬に乗った彼らの像を設置することに強い意志を示していました。

こうした像は、南部の大義に生涯を捧げた英雄を適切に称えるものだと考える人もいました。しかし長年にわたり、これらの像の撤去を求める声も存在しました。奴隷制という制度を維持するために戦った将軍たちであり、その像が人種差別的な意味合いを帯びるからです。

やがて公民権運動の時代が訪れ、白人の人種差別主義者だけでなく、リッチモンドで生まれた別の英雄、黒人テニス選手のアーサー・アッシュを称えるべきだという声が上がりました。この黒人の英雄を、白人の南軍将軍たちと同じ場所で称えるべきかどうかをめぐり、地元住民の間でも、また地元以外の人々の間でも意見が割れました。

情勢がさらに緊迫したのは、ミネソタ州で警察がジョージ・フロイドさんを殺害した後のことです。ブラック・ライブズ・マター運動は勢いを増し、全米の主要な争点となりましたが、とりわけ一部の都市で顕著でした。その都市の一つがリッチモンドであり、そこでは破壊行為を行った者たちが、アッシュ像に「White Lives Matter」と書かれた看板を掲げました。

一方で、クリストファー・コロンブスの像も標的となり、倒される事例が相次ぎました。2020年には、ボストンやボルティモアなど北部の都市にあるコロンブスの記念碑が30以上も抗議の対象となっています。

現在のコロンブスをめぐる文化戦争は、理解しにくいと感じる人もいるため、背景の説明が役に立ちます。厳密にはコロンブスはアメリカを「発見」したわけではありませんが、彼は19世紀以来、イタリア系アメリカ人の団体によって、民族的誇りの象徴として称えられてきました。これは、イタリアからの移民自身が迫害や差別に直面していた時代でもありました。しかし像に反対する人々は、コロンブスが大規模な植民地化と抑圧の時代の到来を招いた役割を担ったことに強い憤りを抱いています。

根本的な問題は、公園、学校の敷地、政府の所有地といった公共の土地の利用にあります。例えば2020年、バージニア・ミリタリー・インスティテュート(伝統的に南部系の学校)は、兵舎の正面にあった南軍のストーンウォール・ジャクソン将軍の目立つ像を撤去しました。この撤去は、同校における黒人学生に対する敵意と人種差別的な雰囲気を示す報告が出たことを受けて行われました。対立を解決するため、学校はその像を南北戦争の博物館へ移しました。

南軍の像に抗議が起きる理由は理解しやすいかもしれません。しかし、なぜコロンブスなのでしょうか。一方には、著名なイタリア人の人物を称えるために資金を集め、像を建ててきたイタリア系アメリカ人がいます。他方には、コロンブスを、カリブ海の先住民タイノの人々を奴隷として扱った人物、そして南東部の先住民を屈服させる残虐なキャンペーンの発端となった人物と見なし、その結果、暴力と病によって彼らが壊滅的な被害を受けたと考える人々がいます。

像は象徴です。そしてそこから、どの歴史を称えるのかをめぐる対立が生まれます。


[7] ミシシッピ州の教育の進歩

長年、このようなジョークが語られてきました。「なぜアラバマ州とルイジアナ州はミシシッピ州に感謝しているのか」。答えは、「ミシシッピ州が州別ランキングで50位でなかったら、自分たちが最下位になってしまうから」です。

どの州であれ、社会的あるいは経済的なランキングの「最下位」にあることを理由に嘲笑するのは残酷です。しかし、アラバマ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州を、貧しく、洗練されておらず、教育水準も低いとする認識には、一定の根拠があるとされてきました。そしてミシシッピ州は、しばしばその最下位に位置してきました。

しかし、状況は変わりました。2026年のミシシッピ州は、貧困家庭の子どもが教育を受ける場所として、全米でも最良の州の一つとなっています。かつて同州は全国テストで49位でしたが、現在は4年生の読解力において全米トップ10に入っています。

貧困は依然として学力を左右する主要因であり、マサチューセッツ州のような裕福な州は、読解と数学で習熟している子どもの割合が最も高いままです。しかし、貧困やその他の子どもの属性を調整して見ると、ミシシッピ州は小学4年生の読解と数学で全米1位であり、8年生(中学2年生)でも上位に近い位置にあります。

「困難な状況から来た子どもたちが、可能な限り多くを学べるよう支援している州はどこか」という問いを立てるなら、ミシシッピ州は現在、より裕福な州を含む多くの州を上回る成果を示しています。一部地域では子どもの半数が貧困の中で暮らし、成人の3分の2が大学の学位を持たないことを踏まえると、この結果は注目に値します。

もっとも、同州の伸びは主に就学初期に限られています。同州が重点的に取り組んできた領域がそこにあるからです。得点をそのまま見れば、ミシシッピ州の8年生(中学2年生)は全国テストの読解で41位、数学で35位にとどまっています。

ミシシッピ州の成功は、読解指導の方法に由来します。これは「リーディングの科学(science of reading)」として知られるアプローチです。同州は成績の低い小学校に、読み書きと数学の「コーチ」を派遣しています。その目的は児童を教えることではなく、教師を教えることにあります。新しいプログラムでは、児童の能力を毎年テストする代わりに、教師をテストします。低所得地域の学校では、経験の浅い教師が児童を十分に教えられないことが少なくありませんでした。そこでコーチが学校を訪れ、確かなカリキュラムを作り、時間割を整え、教室での毎日の「読書時間」を確保できるよう支援するのです。

小学校低学年での成果は、3年生の終わりにテストで検証されます。その年末の州のテストに合格できない児童は留年となります。この政策は、児童に感情面の影響が出るとの懸念から不人気であることも多いです。しかし州は、3年生の段階で不合格の児童をもう1年留年させ、後の学年で必要となる基礎技能を習得させる方が望ましいと考えています。

ミシシッピ州の教育改革が完全に成功したと断言するにはまだ早いですが、低所得・低学歴地域の子どもたちが、学校卒業後の人生で不可欠となる技能を高めるために、追加の支援を受けているという点は評価されてよいでしょう。


[6] Where is the 100th meridian? 100経線とは?

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[5] 【対談】「『地図で読むアメリカ』を読む」

🗓 2020年 9月27日 (日) 16:00~

仏文学者の鹿島茂先生とジェームス・バーダマンの対談が YouTube で放送されます。

アメリカの地理、移民、大統領選挙にご興味ある方、ぜひご覧ください!

https://allreviews.jp/news/4974 

鹿島先生に書評を書いていただきました:allreviews.jp/review/4985


[4] Deep South と Upper South はどのように違うでしょうか?

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The gray section is the Upland South or Upper South.

The section below it, which is marked “plantation”, is what is called the Deep South. The latter is geographical, agricultural, and cultural.


[3] 第2次世界大戦中に日系人が全米講演旅行

第2次世界大戦中に約12万人の日系人がアメリカ本土10箇所の収容所に強制移住させられたことは、「サウス地域」、「ハートランド地域」「サウスウェスト地域」で折に触れ言及しましたが、これらの収容所を巡って講演旅行した比嘉トーマス太郎という人物について少し触れておきましょう。

比嘉はハワイ生まれの沖縄系二世です。真珠湾攻撃後、ハワイ日系二世で構成された第100歩兵大隊の兵士としてイタリアに派兵されます。砲弾破片を受けて重傷を負ったのちに戦列を離れ、アメリカ本土ジョージア州の陸軍病院で治療を受けた後、コロラド州の兵営に移り、25日間の静養旅行休暇を得ます。そこで、ある沖縄出身者に伴われ日系人強制収容所のひとつグラナダ収容所 (アマチ収容所とも呼ばれました) を訪れ、収容所から志願した二世兵士の親たちにヨーロッパ戦線の実情について講演します。

そのことがきっかけで、全米日系人市民協会 (JACL) に依頼され、全米での講演旅行が始まります。JACLは比嘉の貢献に対して次の様な感謝状を贈りました。

日本人を祖先にもつアメリカ人は鉄条網で囲まれた戦時収容所から戦場に赴いた。戦地での犠牲者は多大であった。・・・比嘉太郎上等兵は、訓練中や戦場での日系米兵に関する噂や、誤った情報を払拭することに多大なる貢献を果たした。全米各地を120日間にわたって旅したトーマス比嘉上等兵は73の講演において2万300人の聴衆を前に話した。80以上の新聞がとりあげ講演内容が紹介された。日本で教育を受けたため、比嘉上等兵の英語は十分ではなかったが、日本語の流暢さのおかげで素晴らしい講演者となった (筆者訳、以下省略)。(UCLA JARP Collection)

詳しくは細川周平編著『日系文化を編み直す―歴史・文芸・接触』(ミネルヴァ書房、2017年) の第8章「比嘉トーマス太郎の「巡講」―戦時下米大陸における講演旅行」にまとめましたので、ご関心のある方はこちらをご覧ください。比嘉太郎編著『ある二世の轍―奇形児と称された帰米二世が太平洋戦を中心に辿った数奇の足どり』(1982) にも詳しく述べられています。(森本)


[2] 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) アメリカでの反応

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の感染拡大とその影響が日に日に変化し、多くの情報が飛び交っています。国内の状況に追いつくことだけでも困難ですが、母国アメリカの現状を把握することはさらに難問です。日本に入ってくるアメリカについての報道は省略されているため、情報量も内容も限定されてしまいます。

そんな中、アメリカの詳細な状況が垣間見えるきっかけが二つあります。

一つ目は身近なところです。
私の弟の一人はコロラド州デンバーに住んでいます。アメリカ西部にある、ロッキーマウンテン国立公園から遠くないところにある大都市です。二週間前、その弟が新型コロナウイルスに感染したと妹からのメールを通して知りました。詳細はわからないが、重症で救急車で病院に運ばれたというのです。

その後は、日替わりで別の兄弟からメールでアップデートが入りました。ある時点では ICU (Intensive Care Unit = 集中治療室) で酸素を投与され、数日後、酸素は外されて、症状は重い状態でありながらも病院の別のセクションに移動になりました。のちに病室からラップトップ (ノートパソコン) を使い、彼自身が直接私たちにメールで状況を知らせてくれました。あまりにも症状が重く、「死んだ方が楽なのでは」と考えてしまうほどだったと綴られていました。

幸いなことに弟は死ではなく回復へ向かいました。二度の陰性の検査結果をもって退院となり、隔離生活が始まりました。彼と他の陰性患者は政府によってホテルに移され、6泊過ごすことになります。患者はその間部屋を出られず、一日三度食事が部屋まで届けられたそうです。さらに、National Guard (州兵) が廊下を行き来し、患者が部屋を出たり、他人が入室したりしないように監視していたというのです。

全て順調にいけば弟は自宅に戻れますが、仕事に復帰できる状態までに回復するのは先になりそうです。おそらく、健康な状態に戻るまでの苦難は数週間、もしくは数ヶ月かかるでしょう。

二つ目はネット経由で信頼できる報道機関が発信する情報です。
その中でも印象的だったのは、ミシガン州の抗議活動についてのニュースです。

政府による新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための外出禁止令に反発し、数千人が議会周辺に車で集結して抗議デモを行ったのです。参加者は長距離に渡って道路を妨げ、休業指示や規制内容に対して「厳しすぎる」「生活を妨害するな」と抗議しました。知事の指示は「unconstitutional (憲法違反) だ」とも抗議し、仕事と給料を返せと求めたのです。このデモに参加することでウイルスに感染するかもしれない。しかし、参加者にとってはウイルスより仕事と生活が心配なのです。

デモが起きた場所はインダストリアル・ノース地域にあり、『地図で読むアメリカ』では「北部の産業地」「ブルーカラー」「失業率が比較的高い」と説明しています。これらの特徴はこの出来事に顕著に現れました。
(デモについての日本語の記事:http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN21Y0O0.html)

日本でもニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事についてのニュースを目にしますが、彼が休業を要請すると、この危機的状況では「正しい判断だ」と州民の多くは賛同します。しかし、もし彼がミシガン州の知事だったとして、同じことをすれば、ミシガンの人々は怒りで抗議をするでしょう。

アメリカの一部の地域の声は、アメリカ全体の声を反映するわけではないのです。 


[1] フロリダ州の最南の大都会のマイアミは南部に入らない?

そうです。南部の文化、気候、経済、思想はフロリダ半島のなかばまで伸びます。マイアミは北部の投資家によって開発され、鉄道を引き、富裕層のために作られたのは20世紀初めでした。そこに住むようになった住民や観光客はニューヨーク、シカゴ、カナダから来他ので、伝統的な南部文化とは全くと言っていいほど関わりがありませんでした。今ではキューバ、ハイチ、中南米の移民が多くなり、どちらかと言えば、南フロリダ周辺は北部的気質と国際色豊かな地域となっています。